伝統構法

2015年7月21日 (火)

ちょうな、がんどうのこ、きかいじゃくり、よき…呪文ではなく…②

続きまして、

取り出されたのはこちら。

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お~なんだかすごい。「がんどう鋸」と呼ぶそうです。

木挽きさんの大ーきな鋸をイメージさせる、その縮小版のような姿。

この鋸を使って、木組みのための長いホゾを切り出していたそうです。

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現在の作業場の風景を、水俣エコハウス建築時平成21年の写真から。

長ホゾが写っているものがなく残念ですが、作業場でホゾやホゾ穴の加工をされています。

見たかったな~

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そして、現場で組み立てていったのですね!

さて、見せていただいた道具の最後はこちら、「きかいじゃくり」

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襖や障子などの建具が入る溝を加工する(「さくる」と言われます)ときに使っていたそうです。

鉋(カンナ)の一種ですよね。溝の幅に合わせて調節し固定できるようになっていました。

この道具ができる前は、鑿(ノミ)で削って掘っていたのではということ。手作業の道具も、仕事がやりやすいよう改良を重ね今の形があるのだなあと、歴史を感じました。

ちなみに、建具が入る上側の溝が上記の写真ですが、

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こちらは、下側の溝(レール)の写真です。

色が違いますね。建具が走るレールの部分は傷が付きにくいよう堅木を貼ってあるからです!こちらは建具屋さんのお仕事です。

大工さん、左官さん、建具屋さんはじめ、地元のいろんな方が関わりみんなで造り上げた水俣エコハウス。

随所にみられる細かな気配りにも注目です!

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ちょうな、がんどうのこ、きかいじゃくり、よき…呪文ではなく…①

ご近所の方が昔の大工道具を見せてくださいました。

昭和30年代、集団就職の「金の卵」で東京へ出て、大工をされていたそうです。

その頃まで、今みたいな電気を使う道具はなくみんな手でやっていたそう。

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こちらは、「手斧(ちょうな)」、材木の荒削りに使われていました。

一度見てみたいと思っていたものなので、実際見せてもらい嬉しい管理人。

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平成21年の水俣エコハウス建設時の写真でも見つけました。

「手斧立て」といい、大工が工事に取り掛かる最初の日に、安全を祈願して行う儀式だそうです。

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儀式として関係者が一人ひとり、梁を手斧ではつって(削って)いったそうです。自分の足をはつらないよう気を付けて…

皆さんが削っている立派な木材は、今はこうなってエコハウスを支えてくれています。

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これらの梁、上下には丸太の丸みがそのまま残っていますね。

それをこちらでは「べんこ梁」と言われますが、漢字を知りたくて検索しても出てきません。

同じものを「太鼓梁」と言うようですが、それの方言でしょうか?ご存知の方は教えてください!

手斧の柄の独特の曲りは、立木の時から蔓で縛ってクセを付けておくそうです。道具作りはいい仕事をするための土台だったことを感じます。

今はほとんど使われることはない道具たち、それらを使う技も失われていくのでしょうか?

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これはまた恐ろしげな。エコハウス畑への侵入者が持っていた?

いえいえ、これは「よき」といいます。

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こちら、薪割り用のエコハウスのよきです。

大工さんのと刃の形が違いますね。

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先ほどの「べんこ梁」は、そのまま壁の外へ抜け、エコハウスの長い庇を支えています。

斜めに落とされている部分など、以前は機械がなかったので、この「よき」を使っていたと話されていました。大きな丸太から、よきや手斧で削っていっていたのですねえ。

すみません、また長くなり写真が入らないので、いったん切ります(^^;

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2015年7月 5日 (日)

雇われ者のホゾ!?


家の構造を形作るとき、金物の留め具を使わない伝統構法では、

柱や梁などの構造材をつないだり留めるにはどうしているのでしょう?

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図のような突起(ホゾ)とそれが入る穴(ホゾ穴)を加工し、

両者を組み合わせて接合します。そこに込み栓を差し込んで留めるわけですね。

絵は単純に書いていますが、実際は幾種類もの複雑な組み方があり、ホゾとホゾ穴の形もさまざまです。

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こちらはエコハウスに見本で作っていただいたものです。

これらは表面のホゾの形が見えていますが、ほとんどは材の内部に隠れて一体どうなっているのか分からない管理人。

ホゾとホゾ穴はどんな形で、どう繫ぎ合わされているのか…見えない部分が気になります。

前回、「込み栓」について書いた記事で紹介したこの部分、

面白い事を教えていただきました。

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柱と両側の梁、この3者を留めるのに、最初の絵のように自分たちの一部にホゾとホゾ穴を加工して差し込んでいるのではなく、

桧(ひのき)で作った別のホゾを中に入れ、そこを込み栓で留め、三者をつないでいるというのです。(下図)

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水俣エコハウスの構造材に使っているのは杉です。

桧はそれより固い木なので、中に入れるホゾに使うことで、両側の梁を柱側に引き寄せる力がより強くなるそう。

また、材の端にホゾを加工しなくていい分、材料が短くても済むということもあります。

そして、私が面白かったのは、このような別の材を入れるホゾのことを「雇いほぞ」と言うことです。

雇われてしっかりここで働かされているのですね!?

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上からのぞいてよく見てみると…

確かに、色の違う別の木が入っているのが見えます。

出来上がってしまえば伝統構法の凄さは残念ながら素人にはよく分かりません(見えません)が、

それは見えない部分に技が詰まっているということで、

その知恵と技術はもちろん、一昔前までの日本人的な粋さも感じてかっこいいなと感心します。

皆さんも、水俣エコハウスに来られた時は、

伝統構法にも注目して見学していってくださいね!

謎を探すような楽しさがありますよ(^^)

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2015年6月30日 (火)

込み栓 縁の下の力持ち!

 水俣エコハウスは伝統的構法によって建てられているのが大きな特徴です。

しかし建築や大工さんの仕事のことは全くの素人の管理人、

金物は使わず木と木を組んで建てられていると人に説明しながら、実際には柱や梁がどのように接いであるのか、どうやってこの家が建っているのか細部のことは分かりません。

建てる過程を見学できれなどんなに良かったかと残念に思っていました。

最近、金物を使う在来構法に木組みの伝統を生かし,木をふんだんに使った丁寧な家造りをされるところと知り合いになり、

墨付けからされる大工さんに現場でいろいろ教えていただいたり、

エコハウス建設時の棟梁田口さんにもお話を聞かせてもらったりしています。

ぽんぽん出てくる大工さん用語や大工さんの頭(空間把握がすごい!)についていけず、

本を読んだり、何度も尋ねたり・・・

その奥の深さにすっかりはまってしまっています。

職人さんの手による長い伝統が生んだ家つくり、そんな昔ではない時期まで当たり前だった構法も、今では理解されていないことが多いようです。

それは伝統構法に限らず、家つくり全般についてかもしれませんね。

ここで働くことがなっかったら私もその一人でした。

水俣エコハウスに使われている技を、理解の範囲で少しづつ紹介していきたいと思います。

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まず、驚いたのは「込み栓」のお話しです。

固い樫の木で作られたこの栓、

留め具としての金物を使わない伝統工法では、木と木をつなぐ部分に差し込んで両者を留める、木の釘のようなものでしょうか。

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こちらは、2階の床を支える梁が柱に継いである箇所です。

込み栓の頭が5本見えますね。

実はこの込み栓、ただ穴を開けて中のホゾ(相手側の突起)に貫通させてあるだけ(下図の右側のように)と思っていましたが、(図は、写真の柱と梁を上から見た断面)

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なんと、(この箇所では)込み栓が梁にささっている位置と、中のホゾを通るときの位置は、1分(3ミリ)、柱側にずらしてあるそうなのです!

そのことで、梁を柱の方にぐっと引き寄せる力が生まれると聞いてビックリ!!

水俣エコハウスには800本もの込み栓が使われていますが、みんなただささっているだけではなく、家が立ってる間、毎日木と木を引っ張っていてくれているのか!と、感心して頭が下がりました。

それに、材料の段階で、建った時の全ての部材の位置を把握し、印をつけていかれる大工さんの凄さを思いました。

1分くらいなら、打ち込む時もすっと入っていくそうですよ。

ここで使われている「継ぎ手」(木と木を横方向につなぐ場合の継ぎ方)については、

次回ご紹介します。

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