水俣エコハウス通信

2020年8月30日 (日)

市報連載「水俣エコハウス通信-職人さんに聞く-」⑤

水俣市広報誌に連載中の「水俣エコハウス通信」第5回の記事をお届けします。

前回の続きで、古田建具店の古田正美さんのお話の後半です。

後半は見学者からの質問を通して、水俣エコハウスの木製建具についてお聞きしました。

8

水俣エコハウスに使われている木や土、藁などの自然素材が持つ機能が、

その季節や気候ごとの室内を、快適な空間に保つ助けをしてくれます。

Img_6417

部屋の中が木陰や気持ちの良い公園で過ごしているような、自然な温かさや涼しさを感じます。

木自体が呼吸しているといった、結露や湿度から始まった木の家の説明や、

計った温度など数値化できるものが全てではないということまで、心地よさについて考える興味深いお話でした。

Img_6443

古田さんが手がけられた格子網戸には下に鍵が設けてあるので夜も網戸のままで安心です。

Img_6425

雨戸の鍵は木の閂(かんぬき)。見学に来られる方から人気で、懐かしいという声も多いです。

Img_6431

今の季節は建具を使い分けながら、開けっ放しにして空気を入れ替えたり、雨戸にして日差しを遮蔽したり、網戸と障子を組み合わせたり、

外と屋内を隔てないで気持ち良く過ごせられます。

Img_6442

Img_6439

「(気密性重視の建物だと)いまは風が吹いてもわからん。音がしてもわからん。」という古田さん。

「木の家を頼む人は、木の家が好きで面白さも分かっている人じゃないかな。愛着が全てだと思う。」

エアコンのない水俣エコハウスはむしろ風の流れを考えて作られてあるので、

もし外から全く風が入ってこないと暑かったりと体力面では大変ですが、

網戸やガラス戸を開けると、たいていは涼しい風が吹いてきます。

ほかにもサルスベリの花が部屋に流れてきたり、鳥の飛んでくる音や声が聞けたり、

虫やカエルのお客さんが縁側に現れたり、様々な面白さがあります。

家のつくり方の一つの選択肢として、引き続き連載のほうでも水俣エコハウスに興味を持ってもらえると嬉しいです。


 

 

| | コメント (0)

2020年7月 5日 (日)

市報連載「水俣エコハウス通信-職人さんに聞く-」④

水俣市広報誌に連載中の「水俣エコハウス通信」第4回をお届けします。

今回は、水俣エコハウスの木製建具を手掛けた古田正美さんにお話を聞かせていただきました。

7

Img_4498

昔ながらの木製建具について話すことは、昔ながらの(水俣エコハウスのような)家について話すことに通じると、お話伺って思いました。

「(建具も)その当時その当時の家の造りに合わせているよ。それに見合った作り方というのがあるんだ。」

金物を使う一般的な木造住宅より、もう少し昔の、手づくりの木の家であるエコハウスだからこそ、エコハウスの建具も全て手作業という古田さん。

Img_4500

「板に揃えて、一枚分ずつ定規を当てて鉋で削る深さを決めて作っていった。加減を見て作るのが手仕事。機械を使っても、機械の目盛りなんてあってなかもん(あってないもの)。

機械も手加工の延長だから。手の順序が分かっていないと割り付けも出来ない。以前は爺ちゃんも手でしとった。縦しゃくりを使ってコツコツコツ。」

Img_5262

今号で紹介した襖も手作り。

「木を組んで骨格を作り、その両面に手漉きの和紙を7枚重ねた。中を竹釘で止め、外枠は杉でということだったから下地から自分で作ったんだ。」

目にみえないところまで手をかけられた木製建具の造りを知れば知るほど、長く使い続けられるようにという工夫やひと手間を感じました。

また、一説によると和紙の方がベニヤよりも強いとのこと。エコハウスの襖和紙は空気の調湿・浄化作用を持つイグサが仕込まれています。

Img_5230

2階の子ども室の収納戸はセイタカアワダチソウが使われています。

「どうしようもないような雑草を活用する。通気性も良いよね。」

エコハウスはエアコン無しですが、木製建具自体に通風のための工夫がされているので夏でも過ごしやすいです。

「エアコンをガンガンかければそりゃ涼しいさ。でも空気を対流させるようにしたり、湿気がこもらないようにしたり、涼しさを保つようにしたり。測った温度じゃなくて体感温度で何か涼しいと思う家。それが足るを知る家じゃないかな。」

数値化できない、計れないエコや心地良さ。生活の足るを知るという考えが設計にも現れているという、古田さんの言葉から水俣エコハウスが大事にしている要素を見ることができて楽しい時間でした。

Img_5270

最後に一つ紹介。トイレットペーパーのホルダーも古田さんの手作り。

落ち着いた表情で納まりが良い。ここを見学された人達からも大人気です。

 

 

 

| | コメント (0)

2020年6月27日 (土)

市報連載「水俣エコハウス通信-職人さんに聞く-」③

水俣市の広報誌に連載中の「水俣エコハウス通信」の第3回です!

今号ではQ&A型式で、見学者からよくある質問に田口さんに答えて頂きました。

6_

質問の1つ目について・・・

一般的に「木は傷みやすい」「弱い」というイメージがあるようです。

Cimg3952

設計士の古川さんも「木材は濡れても乾けば長持ちする」と言われています。

骨組みが見えること自体も大事だそう。傷みを初期に発見でき、手入しれながら長く住む住まい方です。

質問2つ目・・・

Cimg3958

エコハウスの室内の柱や梁のヒビを見て「大丈夫なの?」と反応されることも多いですが、答えは「大丈夫」◎

Cimg3962

節についても、「明治世代と(仕事を)やりよったで」という田口さんらしいお答えがいいですよね。

質問3つ目・・・

Cimg3950

エコハウスでは週に1度、手作りのはたきとぬか雑巾がけをしています。その自然なつやが光の加減で美しく現れる時はふと見入ってしまいます。こうやって愛着って育っていくんですね。

Img_2035

(写真は、エコハウスの倉庫の竹製の雨樋を一緒に作り直した時の田口さん)

「色んな意見や見方があるから」と、他と比べたり「これがいいんだ」という言い方はされず、でも「オレはこれが好き」と迷いなく言い切る田口さん。

それが田口さん(のお仕事)の根っこと解かる語りには感じ入ること大でした。

水俣エコハウスを来館者に案内する際に、これがいいと押しつけることなく、ただ自分の内に芯を持って見ていただくことで、伝わる何かが生まれるかもしれない、と思いました。

 

| | コメント (0)

市報連載「水俣エコハウス通信-職人さんに聞くー①②」

 4月から水俣市の広報誌に「水俣エコハウス通信-職人さんに聞くー」と題して連載を行っています!

 タイトルの通り、水俣エコハウスの建設に関わった職人さん達にお話を伺い、エコハウスの特徴を紹介していきます。

20052202

 5月、6月号では、建設時の大工棟梁田口幸男さんにお話を聞きました。

20052201

 ブログでは、短い紙面では掲載できなかったお話を紹介したいと思います😃

 皆さんは「墨付け」って何のことかわかりますか?

 記事にあるように「昔ながらの建て方」では、現場で家を建てる前段階の、木材に寸法などを印してカット・加工する作業も大工さんが行います。現在は「プレカット」といって工場で機械化されてる工程ですね。

00000154

 で!その際に、棟梁が一本一本の木材に寸法を印すことを「墨付け」と言うそうです。鉛筆でもインクでもなく言葉通り、昔から墨を使っているから「墨付け」!

 エコハウスの梁には今も墨の文字や記号が残ってますよ。

Img_4277ed

 棟梁が指図板(設計図に基づいた大工さん用の図面)を見ながら寸法などを墨付けした木材を、のこやのみを使って手で加工していくんですね。そのことを田口さんは「手刻み」「手で刻む」と表現されるのが印象的でした。その数数百本!

00000273

 現場で家を建てる前にこんな大事な仕事があって、機械化される前は大工さん達が腕をふるっていたのですね。

 水俣エコハウスは昔ながらの「木組み」の家だから、この人の手が成す技術が用いられています。

Img_2930

 

 聞いたこともない言葉(田口さんには日常語!)がポンポン出てくる田口さんのお話を伺いながら、受け継ぐというのは単に技術のことではないんだなあ。その技術を生んできた言葉やものの見方や価値観などを含めた1つの世界を生きる姿、そのものなんだなあと感じ入りました。

Img_2119

Img_2107

 

 「よかっじゃが(いいんだよ)、それで」といつも背中を押して下さる田口さん。

 手と経験の世界を生きる田口さん達、職人さんとの時間は、頭人間になりやすいゲンダイ人の私の風通しをよくしてくれます。

Img_4248

 そんな職人さん達の手による水俣エコハウスだからこそ、今日も気持ちの良い風が流れています。

 来月以降の連載もお楽しみに!

 

 

| | コメント (0)